日記

 インターホンで応対したのだがどうにも機械の調子が悪いのか、声が途切れていてほとんど聞き取れなかった。仕方が無いのでチェーンロックを掛けて扉を開ける。そこにいたのはスーツを着込んだ男性2人組。年は恐らく20代後半から30代前半といったところだろう。新聞の勧誘ではないようだ。新聞屋ならばいつも「うちはある事情から特殊な新聞を購読しているので」と嘘を言って追い払うのだが。悪徳住宅リフォームの営業っぽい見た目ではある。しかしそうでもないようだ。柔らかな笑顔で1人の男が口を開いた。「聖書に関する〜」と言った語り出しだった。そうか宗教か、なるほど。エホバの何とかというやつだ。何とかの証人という宗教だな。駅前で、ビッグイシューを売るホームレスさんのようにパンフレットを頭の上に掲げているのをよく見る。取り敢えずチェーンロックと扉の隙間から手を伸ばして、パンフレットを2冊受け取って「それじゃあ」と言って扉を閉めた。何故だか僕の頭には『脳噛ネウロ』の“あの組織”のニコニコ顔のお兄さんが浮かんできた。
 それにしても。今日みたいな寒い日に駅からも結構離れた地域まで布教しにくるなんて熱心だよなあ。きっと彼等にとっては(彼等の信じる)神の教えをより広めることで、多くの人が、そして自分が幸福になれると信じているのだろう。それともノルマでもあるのだろうか?一定のノルマを達成したら幹部になれる、とか。そういった特典が無いとやっていけない気がするな。あと、パンフレットは捨てました。だけど、赤の他人に布教されただけで結構ドキドキするのだから、目の前で親しい人に折伏されたら断り切れるか不安になってきたな。