日記

 秋葉原ヨドバシカメラに自転車を見に行った。数ヶ月前に鷺ノ宮駅前に放置してしまったら即日撤去されてしまったためそろそろ新しい自転車が欲しいと思っていたからだ。秋葉原ヨドバシの6階にてエヴァ使徒のソフビ人形を買おうかどうか迷ってから自転車売場に向かうと、3万だとか4万だとか。安くても2万円代。これならば楽天のネット通販で買った方が安く済みそうだと思い、店を後にした。
 その後、会社に立ち寄る。メールをチェックし、ライターさんに電話を入れて仕事の上がりの催促。人心地ついたところでネットを巡回していると不意に電話が鳴った。休日祝日にはあまり電話は鳴らないはずなのだが。
 受話器を取り「はい、編集部です」と言うと「はっ? 何?」と関西独特のイントネーションが聞こえてきた。声の感じから30代後半〜40代後半といったところだろう。
 「そちら○○じゃないん?」(「○○」とはうちの社名)「はい、○○の編集部ですが」と応対すると、▲▲という雑誌の付録DVDを再生しようとしてもエラーが出てしまって再生出来ないという旨の電話らしい。それにしても口調がいちいち汚い。関西弁が汚いというわけではなく、このオッサンの口調が本当に僕が20数年間生きてきた中で初対面(電話だが)の人間に対する言葉遣いで一番汚い。
 1フロアに何誌も雑誌の編集部があり、生憎僕は▲▲という雑誌の編集部員ではない。明日、改めて連絡をいただければ担当の編集部員がいるので、という内容を伝えると「まだ5時だろ!?」とオッサン。しかし残念ながら今日は祝日。社内には気まぐれで立ち寄った僕ぐらいしかいない。「本日は祝日ですので、また明日編集部か営業部に連絡を下されば…」と伝えると、この一連の僕の電話対応に腹が立ったらしく僕の名前を訊いてきた。素直に苗字を伝えると、「お前なんなん? お前鼻で笑ったやろ? 訴えてもええんやで? もう今からコンビニに怒鳴り込んだろと思とんねん!」といった本当に口汚いフレーズを投げかけてきた。確かに鼻でちょっと笑いましたよ。これほどまでに汚い言葉遣いの大人がいるのだと思ってちょっと笑ってしまいました。それは非難されるべきことだが、それにしても言葉が汚い。
 どうだって良いんだが、買ったコンビニとやらに怒鳴り込むのはそのコンビニ店員さんに申し訳ないので、今一度「明日連絡下さい。新しい本と無料で交換しますんで」と言って電話を切った。
 ああ面倒臭い。五月蠅い。死ねば良いのに。といった感情が浮かんできた。
 まあ、あのオッサンは「エロエロエロ! 今エロが観たい! 今しかない!」。一念発起して買ったエロ本のDVDが再生出来ない。嗚呼、エロ…そんな苛立ちを抱えていたのだろう。その気持ちはわかり過ぎるほどわかる。男には時にそういう風が吹くから。いや、それ以上のことがオッサンにはあったのかも知れない。あんなに口汚く電話で罵ってきたのだ。何かしら焦り、もしかしたら誰かの生命の危機があった可能性だって考えられる。
 娘さんが誘拐されて誘拐犯から▲▲の付録DVDを再生しろと脅されていたのかも知れない。そこにはかかってきた電話の逆探知しようと刑事がオープンリールのテープを回していたかも知れないし、近くには鑑識班がいて犯人グループの指紋はないかと粉を家中にポンポン叩いてたってことも考えられる。だとしたら…だとしたら電話口で僕にあんなにも凄んだとこも頷ける。もしそんな事情だったら僕は何てことをしてしまったんだろう…幼い少女の命が僕のせいで…これからどうやって償っていけば…。
 そんなことは絶対なく、単にエロDVDが観れなかっただけだろう。時々エラーが出ることはあるのだから。