本
- 作者: 羽田圭介
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 文庫
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この本にあるのは圧倒的な闇。それも黒ではなく、深くて暗い濃紺。どうだろうか?本の巻末でこんな感じで導入する解説をよく見かける。ちょっと真似してみたのだけれど。いや、でもこの小説からは濃紺の闇を感じてしまった。読んでいると自分にも思い当たる節があるからなのか、熱いんだか冷たいんだかわからない正に黒冷水(黒熱水?)が胸の辺りを流れる。
異常なまでに兄の部屋をあさる弟。そして冷静に、執拗に弟を罠に嵌めようとする兄。よくある兄弟喧嘩とは2段階は違うであろう冷たい抗争。本当にこれを17歳が書いたのであろうか?今の17歳はこんな文章を考えることが出来るのだろうか?僕の弟も今高校3年だがそうなのか?そんなことまで考えさせられてしまう圧倒的な文才だと思う。メタなラストで僕は満足がいったが、どうにも解説がそれをぶち壊してしまったような気がしてならない。それだけが残念だ。それでもこの小説は町田康氏の『告白』(ISBN:4120036219)以来のヒットかも知れない。