日記

 大学の友人等と立ち飲み屋に行った。安い酒と安い肴を提供してくれる優良店である。立って飲むから酔いは早く回るし、安いからどんどん注文する。それでも1人あたり2千円程度で済むのだから学生にはありがたい。
 ビール→焼酎水割り→ビール。僕は今、中学生。格好良いというものを勘違いしているところだ。ビール・日本酒・焼酎は格好良い。サワーは格好悪い。なんて思っているところだ。そんなことはないのである。サワーはビールよりもアルコール度数は高い。ビールこそ軟弱なアルコールかも知れん。それでも今はこう思わせてくれ。
 友人等との会話の内容は色恋沙汰が7割、その他2割、携帯電話の話が1割程度だろうか。これから少し嘘を書こうと思う。
 

 時々僕はどう仕様も無い破壊衝動に襲われる。その衝動は自分ではとても抑え付けることは出来なくて、いつも周りの人間に迷惑を掛けてしまう。拘束具を鞄に入れて持ち歩く程なのだ。しかしよりにもよって今日という日に限って忘れてきてしまった。僕は完全に正気を失っていた。何故正気を失った時のことを覚えているかというと、もう1人の僕が鳥瞰図のように自分の暴れる様をボーッと眺めているから。白目を剥いた僕は友人の携帯電話を、まだビールの残るジョッキへと投入していた。ビールと携帯電話はレゴブロック同士が填まるようにカチリという音を立ててピッタリと合った。それは綺麗でロダンの彫刻のように思えた。


 嘘終わり。嘘じゃない部分は携帯電話がジョッキに入ったことのみである。携帯電話とは儚い存在だったのだ。僕は知らなかった。それは少女の心のように脆く、たちまちに壊れてしまった。しかし過去に戻ることは不可能。携帯電話は人の心ではない。話し掛けても返事は返ってこない。内側から曇った暗い液晶と、不気味に光を放つ薄い黄緑のライトがポツリと哀しげであった。ジオングの顔だけが残った時のようだった。兎も角、これだけは言っておかないと。石井君、ごめんなさい。
 その後は八王子に向かった。カラオケ。コンビニでウィスキーのボトルとコーラを買い、持ち込む。そして、溜飲。ほぼ2人で空にしたような気がするが、それは誰にもわからない。ただ、ウィスキーに免疫が出来たと感じた。嘗て僕はウィスキーで失態を犯し、それ以来ウィスキーを避けてきた。しかし飲んだ。僕はカラオケボックスでウィスキーを煽った。しかし眠くはならないし、吐き気も催さなかった。大いなる成長であった。
 空が白んで、僕達はカラオケボックスを後にした。そして嘘ミシュラン3つ星のレストラン、富士そばにて上等なブレックファストを平らげた。こうしてまた1日は終わった。
 それでも。兎に角、これだけは言っておかないと。石井君、本当にごめんなさい。この日記で初の実名。