告白

告白

最高。700ページ近くに渡り、実際にあった事件"河内十人斬り事件"を町田康が描く。若し僕が河内十人斬り事件を小説にしようと思ったのならば700ページじゃあ無理だ。倍の1500ページ、否、それ以上ページを費やすだろう。町田康は非常に簡潔に纏め、小気味良いリズムに乗せて我々に提供してくれている。熊太郎(主人公)頑張れ。熊太郎阿呆。熊太郎の気持ちがよくわかるぞ。熊太郎それ以上はやめろ。終始熊太郎視点で物語は進むので熊太郎は良い奴、憎めない奴だと感じてしまう。でもこれが熊太郎以外の村人の視点や、熊次郎の視点で話が進んでいたのなら熊次郎は阿呆な博打打でヤクザ者、自分の気持ちを言葉に現すことが出来ない白痴という印象になるかも知れない。それでも僕は熊次郎を憎めない。彼は不遇で応援したくなってしまう。熊次郎が憎くて堪らない。熊次郎なんかは殺しても構わない存在だ。死ね死ね。こんな具合に熊太郎に共感する。弥五郎に共感する。
ははは、愉快。うわっ腹立つ。この小説を読んでいると喜怒哀楽殆んどの感情が噴出するのではないかというぐらいに様々な場面に遭う。決して文学とは言える作品ではないと思う。しかしながら最高のエンターテインメント小説であると思う。700ページなんていう枚数でありながら読むのが苦にならない。面白いから。町田節が脳にすんなり入ってくるから。重厚。濃密。だけどライトな感覚で読める。最高。