パイロットフィッシュ (角川文庫)

パイロットフィッシュ (角川文庫)

綺麗な文章を書く人なのだなぁ。
最近所謂日本文学を読んでいないので、久々に綺麗な文章を読んだ気がする、という感覚が余計に湧く。
時間軸の組み立て方が上手い。場面の変化にうーむと感心してしまった。
是非この本を最初の頃の山田悠介に読んで欲しかった。
山田悠介の本は立ち読みした程度だけど酷かった。
一方この大崎さんの文章は凄く綺麗。
綺麗なのは文章だけじゃなくて作品全体が綺麗。
タイトルの付け方も素晴らしい。
淡々と流れていく話だけど盛り上げるところはじわじわと、それでいてググゥッと感性に響く。
果たして「感性に響く」なんていう表現があるのか知らんが。


「本作りとは読者を惹きつけて釘付けにして本を買ってもらうこと。
 エロ本は読者を勃起させて売る。だからエロ雑誌の編集者こそが編集者の中の編集者だ」
という台詞が印象的。凄く理に適っていると思う。
他にも名台詞は作品中に散りばめられている。


ただ上手くいき過ぎ。
ほとんどのことが上手くいってる。
そして主人公がキザ。周りの女も何処か気取ってる。
トレンディドラマのような、はたまた日テレのドラマ(今の『87%』の枠)のような。
そこがちょっぴり……そう、むかつくわ〜。


でも10冊に1冊ぐらいならこういう類の本を読んでも良いかな、という気にさせてくれた本。