日記

 6時半に目覚め、布団の中で暫くの間うだうだし、7時にちゃんと起床。テレビを点け「所さんの目がテン!」を観つつ、歯を磨いたりの外出の準備。今日の目がテン!のテーマは「忠臣蔵」。何故12月14日に討ち入りを決行したのか、室内で戦いやすいような短めの槍や弓を用意したり、年老いた戦士が多い赤穂浪士がどのような戦術で一人も死者を出さずに本懐を遂げたか、といったことを科学的に検証しており、非常に面白く観れた。そして再び布団に舞い戻り暫しの間うだうだした後、着替えて外出。
 小1時間かけて、府中の免許試験場へと向かった。2度目の免許の更新をしなければならないのだ。日曜日ということで、試験場は入場制限がかかるほどの混雑っぷり。運良く入場制限がかかる前に入ることは出来たが、申請用紙を受け取るのに30分近く並び、印紙を買うのに10分弱、視力を測るのに同じく10分弱。その他、新しい免許証にはICチップが内臓されるということで、暗証番号の入力等、諸々の作業を済ますのに計1時間半以上。そしてようやく講習となる…ハズだったが、その前に便意を催したのでトイレにて我ながら見事な一本糞をひり、紙でケツメドを拭いたその刹那、異常事態発生。何と拭いても拭いてもケツメドの糞が消えない。10回、20回と拭いても面白いぐらい紙には糞の断片が残っており、あたかも手を水で濡らして臼の中の餅をひっくり返す係りの人が僕が拭いた直後に肛門に糞をなすり付けているのではないかと思うほどである。もう何度拭いたことかわからないが、出血していたのでかなりの回数だったことだろう。(糞を)殺るか、(肛門の粘膜を)殺られるかのデッドオアアライブに命からがら勝利し、講習会場に戻る。
 そして講習が遂にスタート、と同時に僕の直腸で赤穂浪士の殿中もスタートしてしまった。10分間隔で襲ってくる便意を何とか凌ぎつつ40分、その便意(という名の大石内蔵助始めとする四十七士たちの討ち入り)も立ち去ったようで、一件落着かと思いきや、今度は眠気が…。普段は9時頃目覚める僕であるから、6時半起床等という恐らくラピッド・アイ・ムーブメント直後のノンレム睡眠の時に無理矢理こじ開けた目であるからそれは眠い。しかしここで眠ってしまえば赤穂四十七士の奇襲に遭うこと請け合いだ。府中試験場のそれも講習中、つまりは警察組織中枢での寝グソというテロ行為を犯すことになってしまう。裸のラリーズ並みにサイケデリック頭脳警察並みにパンキッシュにプロレタリアートな行為…して良いハズがない。迫り来る睡魔と戦い終え、ようやく前半の講習終了(2度の違反を犯してしまったため、2時間講習なのである)。
 10分間の休憩中にトイレに行こうとも考えたが、一度目の死闘の末、既に肛門周辺の皮膚はズタズタ。これ以上、肛門周辺部の皮膚にダメージを与えるとタダではこの講習会場に戻って来れないだろう。僕はそのまま後半の講習を迎えた。後半開始から20分。教官が飲酒運転の恐ろしさを切々と語っている時に、僕は下痢の恐ろしさを身を持って体験していたのである。あ、下痢便体験(=黄金体験=ゴールドエクスペリエンス)ってのはどうだろう? どうでもないけども。で、何とかかんとか講習終了。その後は難なく新たな免許を交付されて終了。試験場を後にする。
 帰宅しようか何処かに行こうか思案した結果、吉祥寺に行くことに。三鷹駅行きのバスに乗ればより早く吉祥寺に行けるハズだったのだが、気付いた時にはもう遅い。東小金井駅行きに乗っていた。この府中試験場から東小金井駅行きのおよそ15分程度のバスの行程。これが何ともキツかった。
 府中試験場から乗り込んだ僕は幸いにして座席を確保出来たのだが、その後の停留所で人が乗ってくること乗ってくること。後から乗り込んで来る人は正に立錐の余地なく立ちすくんでいるといった感じで、本当に辛そうだ。そこに2歳程度のガキ♂と、彼のおばあちゃんと思しき女性(といっても50歳いくかいかないかぐらいの)が乗り込んできた。このガキが僕に精神攻撃を仕掛けてきたのである。乗り込んできた直後から「ねぇ、座るトコは?」と、「さぁ、自分は庇護されるべき未来の宝。我々子供を大切にしないとこの国に未来はない」と言わんばかりに「子供」ということを盾に、遠回しながら僕を含めた周囲の人間に座席の明け渡しを要求してきたのだ。これにはおばあちゃんも「混んでるんだから仕方ないでしょ」と彼を諭すが、尚もガキ2歳♂は「ねぇ、席は?」を繰り返す。しかし、この僕とて実は体調を大いに崩し、金曜日から会社を休んでいた庇護の対象であろう存在でないわけではないし、「子供特権」を振りかざす子供になぞ席を譲っている場合ではない。何より僕こそが子供時代、大いに子供特権を振りかざしていたから、ガキ2歳♂の気持ちはよく理解出来るのだ。もちろん僕とてご老人・杖などをついている人・妊婦さんには席を譲るし、もしかしたら普通のガキ2歳♂だったら譲っていたかも知れない。しかし子供特権を振りかざすガキには決して…と、今思い返してみれば僕という人間は最初から生まれてこなければ良かったのでは、と思わざるを得ない程の心の狭さである。
 そんなこんなで東小金井駅に到着。中央線に乗り、吉祥寺で降車。駅周辺を歩き、軽い昼食を摂って井の頭公園を歩く。吉祥寺はさすが吉祥寺。住んでみたい街ベスト3には毎度食い込んでくる常連だけあって、適度にオシャレで適度に生活感がある。高校生と思しきカップルを目にすると、僕も学校帰りに彼女と自転車の二人乗りで土手を走ったり、二人乗りを先生に怒られたりしてみたかった、というもうどうしようもない気持ちが湧いてきたりする良い街だ。しかし、本来ならば金曜日から日曜日まで会社を休んでいるのだから今日ぐらいは出社しなくてはヤバいというのはわかっていながら井の頭公園なんかにいたかというと、会社に行きたくなかったからである。今の仕事のコト、ごく近い将来のコト等をここ数日間何とはなしに考えていたら遣る瀬無いというか遣り切れないというか、大槻ケンヂ言うところの「黒マント」が心をガバァッと覆ってきて、陰鬱とした気分になってしまって吉祥寺までやってきたわけです。将来どうしようか、このままの仕事で良いわけないよなぁといった入社3年目に差し掛かるぐらいの人間のきっと多くが抱く感情に正に今陥っている。そんな鬱々とした気持ちで公園を行き交う人を眺めるとアマレスでもやってたんじゃねーか?っていうぐらいガタイの良い黒人男性と、スゲェブスの日本人女性とのカップルが歩いていて、「この2人はきっと凄まじいセックスをするんだろうな」と思ってみたり、「犬可愛いな」とか思ってみたり、気付くと、「アレッ?さっきまでの真面目な悩みはどうした?」と下らな過ぎる考えにばかり流される自分が心底嫌になる。それならもう…と、公園からほど近い商店でビールの500ml缶を買い、高校生の時、電車で見かけた、扉に寄りかかって酒を飲むワンカップおじさんの正にそれになって、ますます自分を呪い、この日記をメモ帳に井の頭公園のベンチに座り、ビールを飲みつつ書いていたのであった。どうする…俺?