日記

 寿町・あいりん地区ときて、日本三大ドヤの山谷に行ってきた。浅草から歩いて行こうかと思ったけど、歩き始めて5分程で雨と雷が厭な感じで激しくなってきたので、そして事前に調べておいた辿るべき道を見失ってしまったので、バスで移動。浅草からバスで10分足らず、「清川二丁目」という停留所に到着。もうここが既に山谷という地区らしいのだが、どうにも普通。ごくありふれた町並み。あまりのありふれ方に拍子抜け。追い打ちをかけるように雨は激しくなってくるし。割りとお洒落なカフェもあるし。
 雨宿りがてら目に付いたチェーンじゃないタイプのコンビニに入る。確かにコンビニの商品のラインナップはドヤ特有の物だ。ドリンク類の冷蔵庫、5個あるうちの3個がアルコールで、惣菜類が充実している。店内が揚げ油の匂いで充満している。しかしそれだけ。ゴールデンウィークの初日、しかも豪雨だったためか人は少ない。雨が落ち着いてきたので、トボトボと町を歩き始める。やたら寿司屋が多い。以前は「ゴミ寿司」と呼ばれる激安で食べられる寿司屋があったらしいのだが、今はもうなくなっているようで、とても残念。そのやたらある寿司屋も暖簾を下ろしているし。飲み屋も開いてない。スナックや喫茶店はちょこちょこと開いてはいるのだが、どうにも賑わっている様子はない。これが寿町なら午前中から店内から歌声が溢れ、酔っ払いが路上で寝ていたりするというのに。こんなんで良いのでしょうか、山谷は。いや、行政的には良いんだろうけど、綺麗過ぎて何とも。もっとノミ屋とか燃えた車とか、注射器を捨てないで下さいの貼り紙とかそういった類の物はないのだろうか。
 意気消沈のまま歩いていると、商店街を見つけた。アーケードの下で雨宿りしているおじさんが沢山いる。ヤッタ!小汚いおじさんだ!7〜8人いるおじさん全員がワンカップを片手に携え、中には路上にペタリと座り込んで、通行を阻まれているワゴンRに後ろからクラクションを鳴らされ、それに文句を垂れている。こんなところに生息していたか、まだ絶滅してなかったんだ、とホッとした気分に。しかし山はここだけだった。ここ以外に盛り上がりはない。せっかくコンビニでウコンの力を買って飲んだのに結局酒場には行かなかった。正確には盛り上がっている酒場がなかった。その後も、3時間程色々歩き回ったが、簡易宿ぐらいしかドヤらしいものは見当たらなく、あのマンモス交番とやらも思ったほどマンモスではなく、きっと自分の中で美化(こういう場合は美化ではないが)し過ぎていたのだろう。それに平日の朝型はきっと職を求める人で山谷は人で溢れているのだろう。どうにも苦々しい気分で南千住駅に向かう。
 歩いて10分程度とあったはずだが、30分以上かけて南千住駅に到着。駅付近は計算された街づくりというか、綺麗過ぎる町並みが広がっており、アメリカの郊外のショッピングモールのような駅周辺施設に、圧倒される。本当に、あまりに綺麗過ぎる。寿町もあいりん地区もそうだったが、通りを一本隔ててこっち側と向こう側では世界がガラリと変わるものなのだなと実感。こんな優等生的まとめでどうだろう。