レキオス (角川文庫)

レキオス (角川文庫)

沖縄出身の作者。爆笑問題の太田がラジオで池上さんの『シャングリ・ラISBN:404873640X)』を絶賛していたので、とりあえず文庫化されている『レキオス』を読んでみようと思った次第。感想は、凄い、の一言。最新の科学やら沖縄の民間信仰やらが入り混じったSF小説で、SFのスピード感と沖縄のゆったりとした時間とが混在した兎に角何と言って良いか、凄い話なのである。読む、というよりはアニメを観てる感じ?僕の語彙では形容出来ない。兎に角読んでみたら良いと思うよ。
先日『シャングリ・ラ』を買おうと思って出来たての書店へ行ったら、どうにも目当ての本が見当たらない。店員さんに訊いてみたところ、検索してくれると言う。紀伊国屋だとかジュンク堂だとかにあるその店独自の検索端末を使用しているかと思いきや、yahoo!で検索していた。しかもその店員さん(若い男性)はパソコンの操作に馴れていないようで、一文字一文字を慎重にタイプしていた。タイプするというよりは人差し指で探り探りポチポチとキーボードを打っているといった感じだった。しかし「しゃ」の出し方が分からなかったみたいだった。そこへ店長さんと思しき男性がやってきた。僕は「池上永一さんの『シャングリ・ラ』はありますか?」とその男性へ訊いてみると、「ああ有名な本だからあると思いますよちょっとこちらへどうぞ』なんて。流石店長。何処にどんな本があるかを把握しているのがプロの本屋ですよね。結果売れていたのか最初から入荷されていなかったのか『シャングリ・ラ』は無かったのであるが、店長さんとキーボードというかローマ字に馴れていない男性店員への一生懸命さに敬服の念を表明する意味で『STEEL BALL RUN』を購入した。ええ。

人生を救え! (角川文庫)

人生を救え! (角川文庫)

僕が本を読むという行為が好きになったのは町田康氏の『くっすん大黒』と出遭ったからだ。独特のリズムというか語調というか、それが気に喰わない人も多くいるのだろうけど僕はそれにハマった。町田康小説の「何かやってやるぞ!」感がヒシヒシ伝わってくるのが嫌い、という人も多いらしい。
まあそれからは町田康氏の著作だけでなく狭い範囲でちょこちょこと本に手を出していくようになり、今の仕事に少なからず結びついているのだと思うのだけどそれが良かったのか悪かったのか。閑話休題。この本の前半部は毎日新聞日曜版において町田康氏が読者から寄せられた悩みに町田節で回答していったものを載せている。そして後半部では町田康氏と作家のいしいしんじ氏とが浅草やお台場や丸ノ内なんかに行って、そこにいる人や物や雰囲気を眺めながら緩めの会話をする。その対談(?)で町田氏は「送られてくる悩みは全て人間関係に起因する」と言う。お金がありません、とかは悩みではないのだ。それよりも「隣人が30匹の猫を放し飼いしており、糞を我が家の前でさせており困っています」だとか「上司が私以外を贔屓してこのままでは会社にいづらいです」だとかの方が人間らしい悩みである。
悩み相談はまあ町田康らしさが溢れているので解決には至らないであろう。それよりもいしいしんじとの対談が面白い。丸ノ内で背広を着て歩く方々を見て、こういう場所に僕らがいると申し訳ないですね。とか何とか。そんなことを話してる大人っているのがまあ良いんじゃない?読んでみると良いと思いますよ。新しいシリーズも出たみたいだし。

ホテルアジアの眠れない夜 (講談社文庫)

ホテルアジアの眠れない夜 (講談社文庫)

蔵前仁一さんはイラストレイター。1年仕事して1年世界を放浪するという素晴らしく有意義な生活をしている方である。「ホテルアジア」とはアジアにあるホテルではなく、「安く泊まれる良い意味でも悪い意味でも印象に残る宿」の総称である(と僕は受け取ったのだけど)。だからアジア以外のことも勿論紹介されている。
長期間旅していれば肝炎などの病気に苦しむがその時は同じ宿に泊まる客が助けてくれたりと、そういったこともまた日本に帰ってくれば良い思い出の一つになるとかならないとか。僕はこの本をインドに持っていった。成田空港に着く前に半分以上、飛行機の中で読破してしまった。この本を読むとこの先の旅が少し不安になったりもした。そして帰りの飛行機でもまた読んだ。インド旅行前と感じるものがやや違う。僕の旅はたった10日のものであったけれどこの本のエピソードがより身近に感じられ、ある種自分の中で「あるあるネタ」(こう書くと物凄く恥ずかしいのはメディアのせいなんだろうか?)に昇華されており、わかる気がする、という何とも初心者旅行者の癖に生意気言ってんじゃないよと指摘されるかも知れないが、少しわかった気がするのである。出発前に読んでいたゲッツ板谷の『インド怪人紀行(ISBN:404366205X)』やねこぢるの『ぢるぢる旅行記ISBN:4821196395)』もこの本と同様に、頭の中に本の中と同じ場面が浮かび上がり、よりリアルに楽しめた。こういう旅本の楽しみ方も良いなあと思った。というかこれが旅本の醍醐味だと思った。ええ。読んでみると良いと思うよ。

世界最低最悪の旅 (幻冬舎文庫)

世界最低最悪の旅 (幻冬舎文庫)

上と同様に蔵前さんの本。『旅行人』という蔵前さんが編集長をやっているバックパッカー向けの雑誌に投稿されてきたエピソードを紹介。メニューに何が書いてあるかわからず、適当に注文したら10人前のスパゲティが来てしまったといった緩い話から、テロリストと間違われて銃殺寸前になったりという生死を彷徨う話まで。読者からの投稿であるから文章は稚拙なのであるが、生々しい話、ライヴ感っていうの?グルーヴ感?そんなものが伝わってきて良いんじゃない?読んでみると良いと思うよ。

SPEED スピード (文春文庫)

SPEED スピード (文春文庫)

日本を代表するライター石丸元章氏が取材という名目で麻薬をやりまくって本当のジャンキーになってしまう本。『SPEED』というタイトルは仁絵ちゃんが好きだからとかそういう蛇足的な話はもう本当に嗚呼畜生。どんな麻薬よりも覚醒剤つまりはシャブ・S・速いやつ・スピードが最高であるという意味からであろうし、この本の文章のスピード感が凄まじいことからもきているのであろうと思う。スピードをイラン人から買って、アルミホイルを丁寧に折って、テレカなんかで粉末にしたスピードを乗っけて、ホイルを下からライターで炙ってじゅわじゅわ沸き立つスピードから発せられる煙を鼻から思いっきり吸い込む。キクそうである。半日が一瞬の間に過ぎていくそうである。楽しいのだそうである。薬をやっている時にどんなことを思うのか、どういう風に気持ち良いのか、が書いてある。僕はこれほどまでに疾走感のある文章を読んだことがない。そしてシャブをやりたいかどうかと訊ねられれば、答えは「いいえ」である。この本を読んでいる限りシャブは楽しそうである。凄く良い気持ちになるとも思う。しかしそれ以上に幻覚やハイになり過ぎてしまった時の状況が恐ろしい。しかしながらまあ石丸さんは「覚醒剤をやるとこうなっちゃうから皆やらないでね」と訴えたいわけでも何でもなく、「覚醒剤は最高です。いやマジ気持ち良いよ。本当やるならやりなよ。そして俺と一緒に楽しもうじゃないか、そうすれば君も立派なジャンキーだ、ははは」と言いたいだけであるのだと僕は思う。僕はジャンキーになりたくはないから絶対にシャブはやらないぞ、と心に誓ったのである。ただそれだけだ。だから読んでみると良いと思うよ。