インド旅行記① 

writer2006-02-22

 今寝たらきっとチェックインの時間には間に合わない。ということで録画して、帰国後観る予定だったアニメ『アカギ』をブラックコーヒー片手に観賞。その後はやはりコーヒー片手にフィギュアスケートを観て、衣装が画一的だな、もっとサイヤ人のバトルスーツみたいなので滑る奴がいれば僕なんかそれだけで結構点数をあげるのに、なんて考えているともう家を出なければならない時間になっていた。寝ない方が長い飛行機移動時に眠れるから良いよね。日暮里駅でY崎君(以下:Y)と合流して、京成線の特急で成田空港まで向かった。あれがくるりが歌っていた赤い電車かあ、等と然程興味の無い話で沸点の低い盛り上がりを見せる電車内。1時間程で空港へ到着。ドルへの両替を済ませ、チェックインカウンターへ。11時20分手続き終了。Yはクロスワードナンクロが掲載されている雑誌と文庫本を購入して長時間移動の暇へ備える。僕はダ・カーポと文庫本1冊を買った。何だかんだで予定時刻よりやや遅れて僕等の乗った飛行機は離陸した。僕は、滅多に飛行機には乗らないが、離陸の時がとても不安だ。しかも今回はインドの航空会社である。離陸時間も遅れたし、搭乗直前のパイロットと思しきインド人は鼻唄交じりだったし。頼む、無事にインドまで行ってくれと八百万の神や仏や先祖やこの前完成したザクⅡに祈った。ダ・カーポを読み、ガムを噛みながら。僕の祈りが通じたのか、無事に飛行機は空へ舞うことに成功した。離陸直後、辛いスナック菓子をサリーを着たフライトアテンダントに渡された。その後暫くして機内食。チキンカレーと野菜カレー。更には海老の蒸したようなものと苺のババロアにヨーグルトまで。かなりのボリュームだ。経由地であるタイの首都バンコクに到着する直前には軽食と称するサンドウィッチ(野菜の水分が出てビチャビチャ)を食べる。
 バンコク着。機内で待機。多くの日本人客が降り、機内は4割程しか埋まっていなかった。これは人に気を遣わないで済みそうだと思っていた僕のその気持ちを打ち砕いたのは、かなり強めの臭い(匂いと言うべきか?)を帯びたインド人客。続々と搭乗。ただひたすらに騒がしい。そして自由過ぎる。フライトアテンダントに気軽に話し掛けるは、立ち歩くは、写真は撮りまくるは。僕は彼等をADHDに罹患している学習障害児だと思うことにして考えるのをやめた。考えるのをやめたということはつまり、ウィスキーを頼んでピーナッツを頬張った、ということである。しかしながらどうしたことかお腹がいたい。まさかインドに上陸する前に腹を下したか?と心配したが腹を冷やしただけであった。
 バンコク出発。すぐに夜の機内食(「夜の」を付けると何でも卑猥に聞こえるが、ここではそういう意味ではなく「夕飯」という意味である)が配られた。マトンカレーと野菜カレーと人参の微塵切りのグラッセwithハッカみたいな味のデザート。Yのを一口貰って、もう僕は自分のそれには手を付けなかった。
 ようやくインド着。予定の現地時間午後8時から3時間の遅れ。空港から宿までどうやって行って良いものか。プリペイドタクシーの受付前でオタオタしていたら、先程からしきりに僕等を誘っていた受付のインド人に中指を立てられてしまった。凹むようなことするな。僕はナーバスで傷付きやすい人間なんだ。しかし唯一の救いは、大英帝国の植民地であったインド人にUKファックじゃなくて良かったことだ。そっちの方が傷付く。どっちも傷付くけど。兎に角ここからは離れようと空港外に出て、再び見つけたプリペイドタクシーで受付を済ませ、宿へ向かう。値段は2人で220ルピー。ちなみに僕等はこの旅の最中、1ルピー=3円で計算した。
 そのタクシーはというと、軽のワゴンカーを15年ぐらい風雨に晒したような斬新なデザインだった。きっとこれがインドでいうところのセンチュリーやプレジデント級の車なのだろう。20代後半ぐらいのドライバー。彼は車線をひたすらに無視して進む。インド以外のアジア諸国でも運転は荒いみたいだが、時速60キロで車間距離1.5メートルはやめて欲しい。30分近く走り、ホテル付近らしき所へ。しかし暗くて汚くて、ここは1回核が落ちた国なのか?鋲だらけの革ジャンにオレンジ色のモヒカン頭が歩いていてもおかしくはない。本当に『北斗の拳』の世界のような雰囲気だった。そして宿は見つからない。アドレスを見せてもドライバーは「ノーアドレス!」と言うばかり。困ったことにこのドライバー、英語が話せない。宿は見つからない。インドの暑さで出てくるネバッこい脂汗の間を冷や汗がツーッと流れてくる(この表現は何かの小説で見たもので良いなあと思ったのでインスパイア)。幾人かの道行くインド人に尋ねてみても適当な道を示してきやがる。まさかこのドライバーは自分にリベートが発生するようなホテルへ連れて行こうとしているのかと勘繰ったその時、ようやく僕等が予約していた宿を見つけた。本当に良かった。砂漠で見つけたオアシスとはこのことか。ホテルの人はなかなか親切だし。チェックインを済ませ、部屋へ案内された。ちょっとしたリゾートの様相を呈した綺麗な部屋だ。荷物を置いて一段落と胸を撫で下ろしていると部屋に電話が掛かってきた。「ハロー?」と僕が応えると、流暢な日本語が返ってきた。ホテルの説明や、どのような予定を立てているのか訊ねてきた。異国で聞く日本語というのは物凄く安心する。日本人旅行者が日本人の集まる宿を選んで泊まるのも納得出来る。しかしこの安心がいけなかったと僕等は明日後悔する。
 初日はこれで終わり。インドに完璧に負けた。

 ※画像は宿でくつろぐY君。心は17歳なので、顔はモザイク処理しています。