AV男優 (幻冬舎アウトロー文庫)

AV男優 (幻冬舎アウトロー文庫)

↑の装丁を外して机の上に置いて出掛けたら、母親が部屋の掃除をしていた。ちょっぴり恥ずかしい。でも内容は全然そんなアレじゃないのよ(オナラじゃないのよオナラじゃないのよ)。
あの『極道の妻たち』で御馴染みのノンフィクションライター家田荘子がメジャー、マイナーを問わずにAV男優へのインタビューをした本。AV男優といえば、ヤレた上に金まで貰える美味しい商売だなんていう世間の認識とは全く乖離した現実が浮き彫りにされていく。撮影の前日には早めに就寝することは当たり前。日頃から肉食を避けたり、トレーニングをしたり、職業病である腰痛に悩まさせたり。暗い面ばかりが見えてくる。別にテクニック(僕には一体何のことを言っているのかはわからないが)が凄い男優が生き残っていくわけではない。女優さんをリラックスさせたり、監督やカメラマンの意図を読み取って、撮影中でも臨機応変に演技出来る能力を持っている男優が残っていくらしい。
個性の強い男優が沢山登場するのだが、その中でも印象に残った男優が1人「美の屋長さく」。実の母親との絡みに挑んだ男である。勿論本番はしていない。擬似である。それでも母親と裸で抱き合ったりお互いの性器をいんぐりもんぐりしたりは絶対にやりたくない。やらなきゃ死ぬって言われたら死を選ぶだろう。この本を読んでいると世の中には本当に色々な人がいるもんだと思わされる。美の屋の家には借金がある。長さくの兄が作ったものらしい。長さくはそれを返す為に男優になったという。男優になって数本目で母親との話が入ってきた。この世界に入ったら何でもやるつもりだった、と語る長さくは悩んだ挙句この企画に首を縦に振った。母親を撮影の見学だと言ってスタジオに連れてきて、直前で内容を打ち明ける。人が良い母親は自分のせいで撮影を滞らせたくないと仕様が無く撮影に参加したとのことだ。すげえ……。もうすげえとしか言いようがない。70代の母親にAV出演を奨めた久本大痴なんていう男優もいるぐらいだが。それを上回る長さくである。しかしこういう人たちがいるお陰でアダルト業界は回っているわけだから絶対馬鹿にしたり、冷たい目で見てはいけない。というか僕は4月からこれに近い仕事に関わるかも知れないわけなのだから、何とも言い難い気分だ。家田荘子の文章は年の割りに拙い感じがするけど内容がエキセントリックだから読める本だ。