インド怪人紀行 (角川文庫)

インド怪人紀行 (角川文庫)

またゲッツさんの本ですよ。完璧にハマってしまったようだ。昔ヤンキーでした、昔はヤンチャばっかりしてましたと得意気に語る人間は大嫌いなのであるがゲッツ板谷の文章には昔の悪行は美化されて書かれていない。そしてそれがあったとしても補って余りある程文章が面白い。また電車で吹き出しそうになってしまった。
今回はインドということでこの前読んだベトナムよりも手強い相手なのである。旅のテーマは「何故インドにハマるのか」を見付けにいくことらしい。これまでの板谷氏、鴨志田氏に加えて板谷氏の嘗ての仕事仲間であった、ハックとナベちゃんという2人が加わっての40日間の旅。
インドはキツい。それが文章から写真からビシビシと伝わってくる。執拗に物を売り付けてくる奴等、電車は乗車率600%。気が狂いそうだ。しかもカレーは不味いらしい。何も良いことが無いじゃないか。本当に何も良いことが無さそうなのである。あるとすれば、それはハシシを吸っている時だけのように思えてくる。インドにハマる理由が見えてこない。麻薬ぐらいか。後は現実逃避とか少しのお金でゆっくり出来るから、というのがゲッツ板谷の結論である。インドは手強い。それでも人生で一度は行くべき国だという気持ちだ。それでうんざりだったらもう二度と行かない。ハマってしまったのなら何回でも行けば良い。そんな国なのだろう。
それにしても驚いたのは、鴨志田穣さんが嘗て重度のヘロイン中毒だったということだ。十数年前、インドにいた3ヶ月間毎日朝起きて夜眠るまでヘロイン漬け。ヘロインといえば薬物の中でも特にヤバいと言われる薬だ。よくやめられたと思う。そしてよく西原理恵子と結婚出来たと思う(離婚したけど)。今は一線のジャーナリストと活躍してる。人生って何とかなるもんだと思わせてくれる。だけど同行したナベちゃんの駄目具合にはかなり辟易させられてしまった。ハックも同じぐらい駄目だが救いがある。最後の方に出てくる鴨志田さんとハックのやり取りには涙が出そうになった。インド云々ではなくこの4人の人間性を辿って読んでみても面白い本だと思う。
そして解説では天久聖一が堅い語り口で結構電波なことを書いていて買って良かったと思わせる一冊なのである。