日記

 とうとう行ってしまった。足を踏み入れてしまった。知っているだろうか"東京ディズニーランド"というテーマパークを。家から1時間半電車を乗り継いで着いた舞浜駅。電車が来ることを知らせる曲が多分ディズニー関連の曲。わからないけど多分そうだと思う。舞浜駅で電車を降りるのはディズニーランドに遊びに行く人か、ディズニーランドに働きに行く人だけなのではないかと思われるぐらいだ(皆顔が晴れやか)。この日記でディズニーランドのことを書いても著作権侵害には当たりませんよね?それだけが心配です。
 

 チケット売場には既に列が出来ている。ディズニーランドが混んでいる、というのは知っていた。幼い頃に来たことがあるし。しかしながら十数年前に僕が来た時にもこのようにチケット売場にさえ行列が出来ていただろうか。平日の午前中だというのに家族連れが多い。わざわざ仕事を休んで、子どもに学校を休ませて来ているのだろう。あとは学生が多いな。ディズニーランドがある限り日本が貧困に喘ぐことはないだろうな。
 1時間近く並んでようやくチケットを購入。それにしてもチケットカウンターの店員は客を何十分と待たしているのに「大変お待たせいたしました」の一言も無かった。"待たせる"ということに慣れ過ぎて麻痺しているのだろう。客も"ディズニーランドは待つものだ"という感覚に陥ってオリエンタルランドの策略にまんまと引っ掛かっている。僕は店員の"待たせること"という負の感覚の欠如に違和感を覚えた。その違和感はディズニーランド内に入ってから一層大きなものになった。兎に角何処でも待たされる。まあ待たされるのは良い。だけど何故店員は何も言わない?何故侘びを入れようとしない?そして何故客はそれに違和感を抱かないのだ。
 ようやく入れた夢の国は十年前とさほど変化は無いように思われた。最も変化していたのは僕の心であろう。幼い頃は素直に与えられたものを享受し、涎を垂らしてウハウハ楽しんでいたディズニーランドも今は違う。パンフレット(地図?)にあるスナック類の価格を目にして驚愕。ホットサンドのセット(ホットサンド1枚とポテトとドリンク)が600円。600円でこの低クオリティーマクドナルドに600円渡せばもっと素晴らしいものが作ってもらえるはずだ。というかペットボトルの水が200円とは一体どういうことだ。映画館やボウリング場でもこんな酷なことはしないぞ。それでもここではそれしか無いから甘んじて買う人がいる。買う人がいるからその値段でOK。その値段で喉もオリエンタルランドも潤う、と詰まらないことも言いたくなる。
 ディズニーランドマジックとでも言いたくなるような現象が次々と目に入ってくる。男も女も耳を付けている。人気なのはミニーマウス。男でもミニーマウスを付けているな。そういえば舞浜駅からディズニーランドに歩いてくるまでに既にいたな、耳を付けている人間が。舞浜駅改札から出るとそこはもうミッキーマウスが国王として君臨し、オリエンタルランドが摂政として運営するディズニーランド王国だったわけか。それにしてもパスポート無しで入れる異国なんてジョン・レノンが唄うイマジンの世界じゃあないか。そんな世界がこの埋立地にあったなんて。ここディズニーランド王国ではあの耳が民族衣装のようなものなのだな。全体の7割近くが民族衣装を身に纏っているな。ってディズニーランドが免罪符になると思うなよ。ディズニーランドを盲信するな。俺は耳を付けているディズニーランド王国の観光客にそう叫んでやりたかったが異国で捕まると何をされるかわからないのでグッと堪えた。何故いつもはリーバイス501XXじゃなきゃ駄目だ、とかバウンティハンターのパーカーじゃなきゃ駄目なのに、とかエルメスのバッグが欲しい、とか言ってる人間が恥ずかしげも無く耳を付けられるのだろうか。ディズニーランドで恥ずかしいことは耳を付けないことなのだろうか。ディズニーランドが全てを麻痺させる。
 そしてまたディズニーランドマジック。アトラクションで待たせる。大したアトラクションでもないのにだ。そしてポップコーン売場でも並ぶ人間たち。買う人間に対して売る店が少なすぎる。需要に対する供給の不足。この現象を何と言うのだろうか。忘れた。並ばせることによって付加価値を作る。ラーメン屋の行列を同じ構造だろう。少し考えてみて欲しい。ディズニーランドのアトラクションが、ディズニーランドのレストランが小山ゆうえんちにあったらどうだろう。皆並ぶだろうか。そもそも皆小山ゆうえんちに来ようと思うだろうか。来ないだろう。なるほどディズニーランドに来る人間とはアトラクションやスナックの味を楽しむのではなくディズニーランドの雰囲気を楽しみに来るのだな。やはは、今わかったよこの俺は。雰囲気を楽しむのならば並ぶことも楽しみの一つに昇華出来るわけだな。やるなオリエンタルランドミッキーマウスやドナルドダックがいて、パレードがあればそこはもうディズニーランドになるわけか。そうかそうか。それにしても何故キャラクターがあまりいないのだろう。キャラクターがいてこそのディズニーランドのはずなのに。あっ!あんなところにグーフィーがいるぞ!それにあそこにはドナルドダックもいる!嗚呼やっと見れたよ〜。ディズニーランドマジック恐ろしや……冷静にディズニーランドを分析していたはずのこの俺までもキャラクターを見ると心躍ってしまうなんて……。これは自己啓発セミナーの構造に似ているな。努めて冷静に、まさか引っ掛かるかと臨んだ自己啓発セミナーで最後には肩を組み、涙を流して大事マンブラザーズBANDを唄うあの構造に。アトラクションやレストランや売店では何も感じなかった、寧ろ負のイメージしか抱かなかったのにキャラクターを目にすると心拍数が急上昇してしまう。キャラクターが俺の弱みだったか……。何処か弱みがあればそこを責めて陥落させるのが自己啓発セミナーのやり口。キャラクターという弱みを克服しないと俺は自己啓発セミナーに乗り込んだ時にまんまと洗脳されてしまう。まさかディズニーランドで自分の弱い部分に気付かされるなんて。だがしかし、お土産を必死こいて買う人を見ているとどうもディズニーランドを好きになれない。ぬいぐるみはちょっと欲しいと思ちゃったけど。
 白雪姫のアトラクション。あれ怖かった。ホーンテッドマンションがディズニーランドで一番怖いと思っている人がいるが大間違いだ。ディズニーランドで一番怖いのは白雪姫の乗り物だ。怖かった。おすすめ。畜生。